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上腕骨近位端骨折のリハビリで確認すべきポイント

こんにちは(^ ^)

本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。

355日目を担当するのは理学療法士のゆーすけです。

上腕骨近位端骨折の患者様を担当した時にどのような基礎的情報を収集すればいいか困る人

「上腕骨近位端骨折ではどんなことを確認すればいい?…。手術方法の違いって?…。手術後はどんなことを確認すればいい?…。」

こういった疑問にお答えします。


★はじめに

上腕骨近位端骨折は高齢者で骨粗鬆症を基礎にもつ患者様で発症することが多く、臨床上でも大腿骨頸部骨折・圧迫骨折・橈骨遠位端骨折と並んで遭遇することが多い疾患ではないかと思います。
今回は上腕骨近位端骨折において術前にどのようなことを確認すべきか、手術方法の違い、術後はどんなことを確認すべきかについてお伝えしていきますので、是非最後までお付き合いください。

★術前に確認することは?

術後のリハビリを進めていくためにまず知っておくべき情報としては術前の骨折の仕方です。

なぜなら術後にROM訓練、自動での筋収縮やADLにおいて最も注意すべきことは転位です。この転位は手術して整復されたものが再びズレることを指しますが、これは骨折した状態に戻ろうとする傾向にあります。ですので、セラピストも骨折時の折れ方を知っておいた方がいいです。
この辺りは以前のブログでも書かせて頂いた、大腿骨転子部骨折と類似しています。
骨折の状態を把握するためにレントゲン画像から医師は治療方針として、保存・手術・術式を決定していきます。

★どのように骨折の状態を把握するのか?

大腿骨頸部骨折ではGarden分類、大腿骨転子部骨折ではEvans分類で転位の状態を把握していくように、上腕骨近位端骨折でもNeer分類から骨折の状態を把握していきます。


Neerの分類は上腕骨近位の骨構造を上腕骨骨頭、大結節、小結節、上腕骨幹部の4部に分け、その分離度によって分類するものです。
骨片の転位が1cm以上あるいは45°以上あれば転位あり、それ以下を転位なしとして2〜4骨片骨折に分け、これに関節面の圧壊型骨折を加えます。

上腕骨近位端骨折の骨折部位としては、大部分が外科頚骨折です。
受傷原因は、転倒して手を伸ばしてついた場合、あるいは直接肩外側を打った場合に起こります。基本的には高齢者で骨粗鬆症を背景とする患者様で多いですが、若年者では、局所に強いてこの力が加わると脱臼骨折の形をとることがあります。


左上腕 前面

【解剖頚】 骨頭の周囲の関節軟骨が存在しない部分

【外科頚】 大結節・小結節と骨幹端が接合する部分

解剖頚での骨折は臨床的には少ないです。
レントゲン画像の前後・軸写・スキャプラY画像から確認します。
レントゲン画像でわかりづらい場合はCTで確認するとわかりやすいです。

★手術方法の特徴

転位の少ない骨折は保存療法として三角巾固定が一般的です。
転位の大きい外科頚骨折に対しては手術療法が適応となります。
関節面に損傷の大きい形、あるいは粉砕型の骨頭骨折には人工骨頭置換術が行われます。

今回は、臨床的に多い外科頚骨折の観血的整復手術でメジャーな髄内釘プレートについて、それぞれの特徴をお伝えしていきます。

【髄内釘】
・肩峰下から4-5㎝下に傷がある
・小さい傷が何箇所かで少ない
・頂点から挿入するため腱板を繊維方向に切る

【プレート】
・大胸筋・三角筋間に15㎝程度の傷がある
 ※外側からは腋窩神経が通っているため
・OP時間が長い
・出血が多い

髄内釘では頂点から挿入するため、傷口が少ないですが2-partで選択されることが多いように思います。プレート固定では術中の体にかかる負担が多いですが、3-partで選択されていることが多いので骨片が多いとプレート固定になってくると思います。中には、若年者では2-partでプレート固定を選択されたケースもあるので、骨折の仕方・年齢などを加味した中で手術方法は決定されていきます。

大結節での骨片がある場合は、自動収縮が可能となったタイミングで骨片が関節内に飛ぶこともあるの術前の折れ方を参考にプロトコールの節目で疼痛の部位とレントゲン画像を確認する必要があります。

★さいごに

いかがでしたでしょうか?

上腕骨近位端骨折は高齢者の4大骨折の一つとして位置づけられていますが、単体の骨折では回復期リハビリテーション病院に転院することはないため、急性期やクリニックで所属するセラピストの皆さんがメインとなる疾患ではあったと思いますが、大腿骨頸部骨折や脳卒中で回復期で担当した際に既往歴として上腕骨近位端骨折をもつ患者様もおられるのではないでしょうか。

現在担当する患者様がフレッシュまたは既往歴で上腕骨近位端骨折を患っていた際に、術式やレントゲン画像などの情報がない場合でも傷口から手術方法の解釈ができ、どのような侵襲があったか、どの程度の骨折があったかを逆算して解釈できることは有益な情報と思います。また、フレッシュな上腕骨近位端骨折を担当するセラピストの皆様もROM訓練や自動収縮開始のタイミングで身体所見に変化はないかOPE前の折れ方を把握していることが、そのタイミングでのレントゲン画像を見る際の判断基準となり転位がないかを確認する大切な情報となります。

今回の内容が少しでも臨床へのヒントになれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

次回の臨床BATONは、一平さんです!
今回のテーマは「自宅復帰に必要な後方歩行の見方」です。
皆さんお楽しみに!
それでは、一平さんお願いします!

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